vol.69 日本を代表する哲学者「梅原猛」と潜在意識【人生を好転させる潜在意識の活用法】

■日本を代表する哲学者「梅原猛」と潜在意識

日本を代表する哲学者で日本の文化、歴史、文学、宗教など幅広い分野にわたって独特の視点・思索で研究し「梅原日本学」を打ち立てた梅原猛氏が2019年1月12日に死去しました。
梅原氏は、日本仏教を中心に日本人の精神性を研究し、「自利利他」の考えが重要なことを述べています。

しかし残念ながら、近年は自分さえ良ければ良いという「自利(利己主義)」の考えが日本だけでなく世界中で強まっています。アメリカ・トランプ大統領もその1人ですが、利益を同じにする人から強い支持を集めています。

「自利」が強まって、「利他」が弱まれば殺伐とした社会になります。犯罪は、法を犯すひどい利己主義の現れですが、自分が死にたいために無差別に人を殺すという究極の利己主義による犯罪も極めて多く発生しています。

そこで、梅原氏が京都の中学校で生徒に授業で教えた道徳のなかの「自利利他」と潜在意識の関係・重要性について紹介します。

 

■自利利他とは

幸せになりたくないという人はおそらくこの世にはいないでしょう。どうやって幸せになり夢や希望をかなえようかと思う気持ちが「自利」です。一方で、自分ではなく人の幸せを願う気持ちが「利他」です。

代表的なのは親が子どもに対して抱く愛情です。最近は、この愛情すら薄らいできているのではと思われる自分の子どもに対する虐待事件も多く起きていますが、特に母親の子どもに対する思いはこの世でもっとも美しく感動的な「利他」の1つです。

仏教には、自分の幸福と他人の幸福を両立させる「自利即利他」という考えがあります。また、広く知られていることわざにも、人に情けをかければ、回り回って自分に良いことが戻ってくるという意味の「情けは人のためならず」があります(情けをかけるとその人のためにならないという間違った理解をしている人もいます)。

凡人は、「自利利他」とは、「自利」が先にあって、「自利」のために必要なら「他利」もしたほうが良いと考えがちです。しかし、仏教ではこの2つを同時に行うことと教えています。いろいろな言葉で語られていますが、空海と並び有名な最澄は「自利とは利他をいう」と、順番があるのでもなく、並列でもなく、一体であると断じています。

■自利即利他は個人、会社、社会を幸せに導く

「自利即他利」が大切なことは、経営の神様と言われた松下幸之助の有名な名言「損して得とれ」でわかります。これは、最初は「損をしてもいいから、後で儲けろ」の意味ではありません。

この言葉は、「サービスを顧客にすることで顧客が非常に満足されるかどうかが決まり、満足してもらえると松下という会社を支持してもらえて繁栄する」ことを意味しています。つまり、顧客が満足するサービスが先にあり、その結果が自社の繁栄になるという利他=自利であるという考えです。

そして、松下幸之助は、「いっさいがサービスから始まる」と考えていいと思うと述べています。この結果が日本最大の家電メーカーの基礎を作り上げました。

また、「自利即利他」の重要性は、最適な意思決定をするときの理論の1つゲーム理論でも実証されています。ゲーム理論のなかに「囚人のジレンマ」というゲームがあり、このゲームでは、「自利」だけを考えて行動すると最も損な意思決定をして、利他も考えて意思決定すると自分ともう1人の両方が最も有利になる意思決定をできることが分かっています。
会社経営のみならず「自利即利他」の考えは、社会生活・個人生活でも重要です。個人や国家がすべて「自利即利他」で行動できれば戦争、殺人、いじめなどは世界から、社会からなくなります。

 

■潜在意識で自利即利他を実行

「自利即利他」が大切なことは、松下幸之助の名言やゲームの理論まで持ち出さなくてもよく分かっていることですが、「自利即利他」を実行することほど難しいことはありません。どうすれば、「自利即利他」の行動ができるのでしょうか?

現在の日本では、仏教から教えを学ぶことはなくなり、また、学校でも「社会生活を営むうえで、法律以前に人間として最低限守るべき規範」を教える道徳の時間も戦後は教科として扱われていませんでした。しかし、道徳心が大きく失われたからでしょうか? 2018年から教科として道徳の時間ができたようですが、どこまで道徳心を高められるかは見えていない状況です。

しかし、どんな困難なことでも「自利即利他」の道徳心は、気持ちの持ち方、考え方なので潜在意識に強く意識させれば実現できます。「自利即利他」の心を育むには「お金」も「特別な能力」も不要です。

ただひたすらに、「他人の幸せは自分の幸せ」「自分の幸せは他人の幸せ」であると信じきることだけです。具体的には、自分と他人の幸せ・成功を信じ、他人をねぎらい感謝するだけでも十分です。自然に行動が伴っていくことでしょう。「自利即利他」から得られる幸福は、回りの他人も幸福な真の幸福です。

 

人生を好転させる潜在意識の活用法

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