フロイトとほぼ同時代に生きたユングは、フロイトとともに人間の心の深層、無意識(潜在意識)が人間の行動に影響することを研究した心理学者であることはよく知られています。
フロイトは、「潜在意識(無意識)」があることを発見し、ユングは無意識に「個人的無意識」と「集合的無意識」があることを発見しました。
フロイトもユングも精神科医として患者を診た臨床経験のなかからその存在を発見しています。「無意識」の概念は日常会話でもよく使用することから、どのようなものかは多くの人が理解しています。
しかし、「個人的無意識」と「集合的無意識」については、用語自体を聞いたことも少なく、どう違うのかまではよくわからないのではと思われます。
そこで、「個人的無意識」と「集合的無意識」とは何かについて解説します。
また、「集合的無意識」をうまく活用すると何を起こせるかについて紹介します。
■ユングが考える「意識」と「無意識」とは?
「個人的無意識」・「集合的無意識」の解説の前に、ユングは「意識」と「無意識」の関係を重視していることから、その関係についてまず理解しておきましょう。
ユングは、精神科医としての臨床経験から人は意識できていることだけで行動していると考えるだけでは説明がつかない行動をする人や、説明がつかない精神状態になっている人を多数診断します。
その結果、「意識」ではないもの、つまり「無意識」が行動に関係していると考えます。
少しわかりやすく具体的にいうと、私たちは真面目な人がある日ギャンブルや女性に溺れたり、おとなしいと思われていた人が暴力的な行為に走ったりするのを見て驚くことがあります。
表面的には立派な社会人として行動しようという「意識」をもって行動していても、抑えられている気持ちを解放させたいという「無意識」があるとその行動が出てしまうことがあります。
ユングは「意識」と「無意識」は、相反しながらバランスをとって互いに補完し合っていると考えました。また、「意識」に対して「無意識」が存在する領域ははるかに広いものであると主張しました。
■「個人的無意識」・「集合的無意識」とは
ユングは、さらに「無意識」には「個人的無意識」と「集合的無意識」があることを発見しました。
「個人的無意識」は、個人に依存した無意識です。個人的に受け入れがたい嫌な思いなどは、「個人的無意識」として心の奥深くに刻み込まれやすくなります。
一方、世界の神話や宗教などに共通性があることから、人種や時代、地域に関係なく人類が共通に持っている無意識があることを見いだしました。
その無意識を「集合的無意識」を呼び、「個人的無意識」よりもさらに奥深いところにあり、古代から引き継がれ、将来にも引き継がれるとユングは考えました。
■「集合的無意識」を活用するには
「集合的無意識」は人類普遍の無意識であることから、ユングは、「人は集合的無意識でつながっている」と考えました。
またユングは、意味のある偶然の一致として「シンクロニシティ(同時発生)」を提唱。分かりやすく言うと「虫の知らせ」がまったくの偶然ではなく意味を持っていると考えました。
「親の死や大ケガをしたとき離れた場所で胸騒ぎを感じた」「いないと思って悪いうわさ話をしたら本人がすぐ現れた」などを多くの人がシンクロニシティを経験しています。
人がつながっていることから起こるシンクロニシティも集合的無意識による働きと考えられます。
シンクロニシティを否定して、これらはまったく意味を持たない偶然がなせる一致と思って無視するのは、「あなた次第」です。
しかし、シンクロニシティの悪い、不吉な例をあげましたが、もちろんいい事例もあります。例えば、事業に成功した人は成功の理由として「いいタイミングで協力者、支援者に出会えた、あるいはいい情報をもらえた」などと振り返る人が多くいます。
シンクロニシティを意味のあることと考えて潜在意識に「夢や願望」を強く意識付けることで関連する人に出会えるチャンスが広がると考えられます。
また、潜在意識に強く意識させられていないと運命の人に出会えても、ただすれ違ってしまうだけに終わる可能性があります。
夢や願望を強く思い込むことは簡単です。運命はそういう人に強く、確実にほほえむに違いありません。