マインドフルネスという言葉を、最近よく聞きます。「マインド+ハピネス」に近い語感からか、なんとなくやすらぎ、安心感、心の幸福感などが伝わってきます。
この言葉は4年ほど前の2014年11月にNHKニュース「おはよう日本」で紹介されたあたりから広く知られていくようになったと思われます。
欧米では10年以上前から注目が集まり、効果があるとして世界的な大企業で社員研修に使ったり、スティーブ・ジョブズを始めとした著名な経営者やエリートサラリーマンが実践したりしています。
今回は、現代のようなストレスフルな時代に必要なマインドフルネスとは何かについて、およびマインドフルネスが潜在意識と大きく関わっていることについて紹介します。
■マインドフルネスとは
マインドフルネスは決して流行語ではありません。英語として600年以上前の15世紀から使われ、19世紀には仏教の「念」の訳語としてマインドフルネスが使われたようです。
日本マインドフルネス学会は、マインドフルネスを「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、何にもとらわれのない状態で、ただ観ること」と定義しています。
「観る」には、見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触れる、さらにそれらによって生じる心の働きが含まれているとしています。
別の表現としては、「今の瞬間の自分自身の体や気持ちの状態に雑念を入れずに気付ける心の在り方」です。
「念」とは「今と心」から合成されているのでピッタリな訳語です。
また、外見的にも仏教の瞑想(目を閉じて静かに考えること、眼前の世界を離れてひたすら思いにふけること)をすることで、マインドフルネスになれるためよく似ています。
■マインドフルネスが必要な理由
ストレスフルな現代の日常生活のなかでは、心を休ませる時間が物理的に取れないことも多く、せっかく休める時間が取れても、ストレスのために心を休められないという悪循環に陥ります。
とりあえず体を休めることで乗り切ろうとしても、実はストレスによる疲れはいくら体を休めても回復できません。なぜなら、脳が疲労しているからです。
また、脳は放置しておくとネガティブな思考に走りやすく、考えなくてもよいような過去の失敗や嫌なこと、さらにまだ起きてもいないネガティブなことを想像しやすいので脳の疲労感はなかなか簡単に抜けません。
常にポジティブな人もいますが、脳の多数派はネガティブ思考です。これは、多くの人が褒められたことよりも嫌なことをより強く、長く、しつこく持ち続けることで分かります。
逆にいうと、人間はこの本能のおかげで厳しい環境にさらされた原始時代を生き延びて来られました。しかし、現代でも必要ではありますが、少し不要な本能です。
■マインドフルネスの効果
脳を休息させ、脳の能力を高められるのがマインドフルネスです。その効果が著しいことから、世界的な大企業の社員研修や経営者自らが実践しています。
マインドフルネスの効果については、学術論文が多数書かれて立証されています。マインドフルネスの効果は次のとおりです。
なお、1-4の4項目が、学術論文を厳しく精査して科学的に間違いがないとアメリカのウィスコンシン大学の脳神経学者らが発表した効果です。
1.集中力の向上
不安や怒りなどのネガティブな状態では注意力を発揮させる脳の部位が働かなくなることが脳科学で判明しています。
2.ストレスに対する耐性の向上(ストレス軽減)
ストレスの多いできごとから比較的早く回復、またストレスの感じ方が弱くなることが明らかになっています。
3.記憶力の向上(創造力の向上)
進行中の思考プロセスを保持する短期記憶に優れていることが、マインドフルネスを実践すると大学生の大学院入学試験の点数が平均16%上昇したことで分かりました。また、複合的な思考能力が強化されるとしています。
4.思いやり・寛容さの増大
思いやりをコントールする脳の神経回路を活性化することで寛容さが増大することがわかっています。
5.免疫機能の向上
ストレスを軽減できてリラックス状態になると免疫力が向上するといわれています。
6.ドラッグやアルコールなどへの依存度の改善
アメリカのニューメキシコ大学の研究結果が発表されています。
7.心疾患予防効果
アメリカ心臓協会(AHA)が心疾患のリスクを軽減する可能性があると発表しています。
■マインドフルネスと潜在意識の関係
マインドフルネスの方法についてはたくさんの情報がありますので、そちらを確認していただくとして、ここでは潜在意識を活用できないとマインドフルネスが効果的にできないことを紹介します。
マインドフルネスは、定義によると「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」なため、静かに瞑想して自分に向かい合うことが必要です。
マインドフルネス瞑想で大切なことは、心の安らぎを得て脳を休めることです。
しかし多くの人は、頭のなかには、心配なこと、不安なこと、つらいこと、悲しいこと、嫌なこと、やらねばならないこと、焦りなどネガティブな考えが、楽しいこと、面白いこと、期待することなどのポジティブな考えよりも多く浮かんできます。
なぜなら、ネガティブなことほど潜在意識に強く刻み込まれているからです。
瞑想の達人になれば容易に「無」の状態になれるかもしれませんが、実は瞑想は無になることが目的ではありません。
瞑想をするほどいろんな考えが浮かんできます。瞑想では、むしろいろいろな考えが出てくることが重要であって、それを無理に「無」になろうとすることは瞑想を否定するものです。
頭のなかに浮かんでくることは、心の奥底に抱えている感情です。仏教では考えても問題はなく、むしろ以下に説明のとおり考えるべきといいます。
また、浮かんでくる考えを否定せず、認めることが大切といいます。それを繰り返しているうちに、頭のなかに何も浮かんでこないようになるときがあって、それが「無」の境地といわれます。
つまり、「無」は目指すものではなく瞑想の途中に訪れる1つの境地です。
そして、仏教での瞑想の本当の大切さは、ここから始まります。「無」になれたということは、それ以上考えることのない境地、つまり問題の核心に触れられたことを意味します。
そのため、「無」になれた頭では、潜在意識が活動して、物ごとの真理の発見や解決方法につながる答えなどが浮かんでくるといいます。
マインドフルネスの効果を手軽に効果的に生かすには、ネガティブな問題に深く向き合うよりは瞑想したときにポジティブな考えが潜在意識から容易にわき出てくるようにしたほうがより早く「無」の境地になれます。
夢や願望をかなえるためのアイデアや手段を思い付けるかもしれません。思い付けなくてもマインドフルネスの7つの効果が得られます。
潜在意識を生かせるようになって、マインドフルネスを生かせれば、あのスティーブ・ジョブズに近づけるでしょう。