最近、「レジリエンス」という言葉をよく見聞きするようになりました。「レジリエンス(resilience)」とは「回復力、復活力」という意味の英語です。
なぜこの「レジリエンス」が重要視され、注目されてきているのでしょうか。
それは、「現代社会が複雑化し変化も速く対応するのが困難なこと」「生活していくうえでの経済・労働環境などが不安定で厳しさを増していること」「自然災害が巨大化し頻度も増えていること」「子どもの世界ではいじめ、大人の世界ではさまざまなハラスメントが増加していること」などによって強いストレスや無力感・脱力感を感じることが増加しているからです。
そのため、「不安や逆境を乗り越える力」「強くて折れない心を持てる力」が必要になってきています。
ストレスを感じないように、不安を持たないように、逆境に陥らないように対処することも重要ですが、完全に防ぎきれるものではありません。
「何も起こらないこと」を目指すのではなく「何が起こっても問題ない」ことをより重視します。
これによりストレス、不安、逆境になっても「立ち直る力=レジリエンス」があると、竹や柳がどんな強風にも枝や幹が折れないと同様に「心」が折れることなく容易に立ち直れます。
「強く」というよりも「しなやかに」生き抜く力「レジリエンス」をどのようにすれば身に付けられるか、そのときに必要な潜在意識とともに解説します。
■レジリエンスを持つ必要性
子どもの社会では、いっこうにいじめが減りません。大人の対応のまずさもあって自殺を選ぶ子どもが多いことは残念でなりません。
また、いじめではありませんが、子どもの世界だけでなく大人の世界でも森友問題で自殺した財務省近畿財務局の男性職員がいます。
その他にも社会に居場所を失って自暴自棄になるのか無差別殺人に走る人もいてたびたび悲惨な事件が起きています。
自殺の選択や犯罪に走ることは極めて重たいことで、簡単に防止できる問題ではないことは重々承知していますが、それでもレジリエンスにはこれらのことを防止できる可能性を持っているということがいえます。
なぜなら、同じような天災、事故、犯罪、虐待などで強い精神的衝撃を受けても、ストレス障害を引き起こす精神的な後遺症(PTSD)になる人とならない人がいますが、その差がレジリエンスの差であるからです。
その他にも、社会・経済・政治などの不確実で不透明な混とんとした状況、変化のスピードの速さ、人間関係の希薄化の進展などでストレスや不安、あるいは危険を強く感じる、持つ人の割合が増加していると思われます。
厚生労働省によると精神疾患の患者数は2008年は218.1万人ですが2011年には320.1万人で約1.5倍に増加。
うち、うつ病(双極性障害を含む)は、同じ期間で43.3万人から95.8万人と約2.2倍に増加しています。
厚生労働省によると2017年度の自殺者は21,140人でその半数から7割が精神疾患を病み、ほとんどがうつ病であったといわれています。
それ以外でも約100万人もの人がうつ病で無気力、集中力・意欲の低下に悩んでいます。
レジエリンスがあるとストレス、逆境、困難、不安などに直面しても以下の力がつきます。
(1)心が折れて立ち直れず逃避したり意欲をなくしたりすることなく、すぐに元の状態に戻れる「回復力」がつきます。
(2)さらりと事態を「受け流す力」や、現状をはじき返せる弾力のあるいわゆる「打たれ強くなる力」がつきます。
(3)動揺していつもの行動が取れなくなったり、無駄・無意味な抵抗をしたりして事態を悪化させることなく、現状が変わらないなら、その現状を受け入れて合理的に対応できる「変化対応力」がつきます。
■レジリエンスを鍛えて高める方法とは
人間には強い、弱いの差はあっても誰もがレジリエンスは本能として備わっています。
そのため、レジエリンスは先天的なものであって物の感じ方・捉え方は、性格や育った環境によることが大きく鍛えることや高めることは難しいと思うかもしれません。しかし、トレーニングで鍛えて高めることが可能です。
久世浩司ポジティブサイエンススクール代表の著書「レジリエンスの鍛え方」によると7つの技術で可能としています。
まず、以下の2つの技術でネガティブ感情に対処できるようにします。
(1)ネガティブ感情の悪循環から脱出する
(2)役に立たないという「思い込み」を手なずける
次に以下の4つの技術でレジリエンスを高められます。
(1)「やればできる」という自信を科学的に身に付ける
(2)自分の「強み」を生かす
(3)心の支えになる「サポーター」をつくる
(4)「感謝」のポジティブ感情を高める
そして、以下の技術で逆境体験を教訓化します。
(1)痛い体験から意味を学ぶ
また、アメリカ心理学会は、レジリエンスを高めるためとして以下の10項目を提案しています。
(1)関係をつくる
(2)危機は克服できると思う
(3)変化を受け入れる
(4)目標に向けて進む
(5)きっぱり行動する
(6)自己発見する
(7)自分を肯定する
(8)展望を持つ
(9)希望を持つ
(10)自分を癒やす
■レジリエンスを高める決め手は潜在意識
レジリエンスは、心の持ち方、考え方ですから特別な知識やこのテクニックを習得しないと高められないというものはありません。
多少必要な知識やテクニックとして、ストレスを感じたら「運動する」「呼吸を整える」「音楽を聴く」などの自分にあった気分転換方法を知って実行することや、他人の評価を気にしないで自己評価で考えるような気持ちを強く持つ程度です。
また、逆境、挫折、不安などに直面しても、これを乗り越えられれば一段と成長できるとポジティブ思考になる程度です。
上述したように「○○する」と思って、そのように実行にできれば自然にレジリエンスを高められます。
しかし、そうであるために逆にレジリエンスを高めることは難しい問題です。長い習慣や性格からくる心の持ち方や感情は簡単に切り替えられないからです。
三日坊主といわれるように強い決意を抱いても三日続けば良い方です。三日坊主でも三日ごとに決意すればよいのですが、どうも脳が拒否反応を示すようで、これができる人は多くありません。
そこでレジリエンスを高めるために効果的な方法としておすすめできるのが潜在意識の活用です。
意識したくても意識できない潜在意識ですが、脳科学的にも効果が認められています。
レジリエンスが弱い人は潜在意識にネガティブ思考が染み付いているから、ストレス、逆境、困難、不安などに対してポジティブな考え方ができないばかりか、受け流すこともできなくて最悪は「心」が折れて自己否定までに至ります。
「自分はこういう人間だ」「これができる人間だ」と常に思い込むことで潜在意識にできる人間のイメージを植え付けられます。
「○○する」と思うことと同じではという疑問があるかもしれませんが違います。
潜在意識への思い込みは、ストレス、逆境、困難、不安などに直面してから思うのではなく、就寝前が効果的ですが常に思いこませるので、意識すれば容易に継続できます。
また、抽象的ではなくポジティブなイメージを具体的にして思い込ませる点で大きく異なります。また。三日坊主になるのは苦痛も伴うから継続が困難ですが、潜在意識に思い込ませるのは苦痛ではなくむしろ楽しいので簡単に継続できます。
ストレス、逆境、困難、不安などに屈しない精神や知識を身に付ける努力も必要ですが、自然災害に科学や人知が及ばないように何事にも屈しない精神や知識を身に付けることは困難です。
むしろ、ストレス、逆境、困難、不安などを現実として受け入れて、そこからしなやかに立ち直る、あるいはやり過ごせるレジリエンスを高めることが、何が起きるかわからない時代には重要です。
簡単なようで簡単に身に付けることが難しいレジリエンスは潜在意識の活用が効果的です。そして潜在意識は誰でも活用できます。