イギリスの医者であり作家のサミュエル・スマイルズの著書「自助論」は、約150年以上も前の1859年に出版された自己啓発書です。
この書籍は、明治維新時代の1871年に「西国立志編」として出版されました。書籍を貫く「自助の精神」の思想は、この時代の多くの人に影響を与え、近代日本の幕開け・形成に大きな影響を与えたと言われています。その精神は、古びることなく今なお多くの人を魅了し続けています。
特に現代の日本は、経済の停滞、貧困格差の拡大、年功序列や終身雇用制、および年金制度の崩壊、老後の不安増大、政治不信など社会・経済・政治のあらゆる面で閉塞感がまん延し、多くの人の元気ややる気を失わせています。
そのため、自分一人が頑張っても何も変わらないのではというあきらめムードが漂っています。このようななか、自分の人生は自分の手で切り開けるという「自助論」を読むことは多くの人に元気とやる気をもたらします。「自助論」に書かれていること、および潜在意識との関わりについて紹介します。
■「自助論」とは
「自助論」は、サミュエル・スマイルズが生きた時代より古い300人以上の歴史の残る業績を成し遂げた有名人を集めて、これでもかというほどたくさんの成功事例を紹介している書籍です。
誰もが知っているニュートン、ミケランジェロ、ガリレオ、コロンブスなどのほか300人をこえる人物について記述されているので、成功をもたらしたさまざまな要因やキーになったエッセンスがぎっしり詰まっています。
ただ、書籍のページ数は300ページに満たないので、どうやって成功したかというハウツーに関しての記述は詳しく書かれていません。
しかし、名前を聞いたこともある有名人の成功談ですから、「自助論」を読むことでポジティブな気持ちが心にあふれてきます。
書籍の冒頭に書かれて、多くの人がどこかで聞いたことがある「天は自ら助くる者を助く」のほか、書籍の全編にわたってどこを切り取っても成功のために必要な名言になるフレーズがたくさんあります。
前向きな気持ちになりたいと思ったときに読むと多くの言葉が心にしみて、頑張ろうという気にしてくれる書籍です。
■「自助論」で著者が言いたいこと
著者のサミュエル・スマイルズは、冒頭で「人生は”自分の手”でしか開けない！」と宣言し、人間の優劣を決めるのは精一杯の努力と書いています。
しかし、努力には苦痛を伴います。そこで、「逆境を逆境としない生き方」や「勝負のカギとなる持続力」について有名人の成功例をあげて自助が大切なことを一貫して主張しています。
そして自助努力を続ければ、「幸運はいつも手の届くところで待っている」「信念は努力を無駄に終わらせない」「向上意欲の前にカベはない！」とその実例を有名人を介して紹介しているのです。
行き詰まった人には、「道がなければ道を造る」のだと意志が重要なことや、自助努力による「自学自習で勝ち取った知識は応用がきく」と自己修養が大切なこと、および「明確な目標を設定する」ことの重要性を訴えています。
さらに、成功するには才能が必要と早々に諦める人に対しては、「才能ではなく勤勉という習慣を身につけよ」と実例を有名人の例をあげて諦める必要がないことを私達に教えてくれます。
なお、書籍のなかで心に刺さる名言はそれぞれ読む人の置かれている状態や性格などで異なってきます。
読みやすい書籍なので、まず自分で何度でも読み直すことをおすすめします。読むたびに違う名言が心にしみて頑張ろうという意欲が湧いてくるでしょう。
■「自助論」と潜在意識
サミュエル・スマイルズは、フロイトやユングなどとほぼ同じ時代に生きていますが、無意識（潜在意識）の概念は持っていません。
しかし、書籍のなかには無意識（潜在意識）が成功するために重要な役割を果たしたことが直接的ではないですが分かります。
サミュエル・スマイルズは、無意識に学んだことの重要性を「人は誰でも耳より目を通してものごとを学ぶ。単に読んだり聞いたりしたものよりはるかに印象が深い。特に子どもは、見たことを何でも無意識に模倣する」と述べています。
無意識（潜在意識）に刻み込まれた人生の手本は、言葉で教え込まれたことより強いと言っています。これをもっと拡大して、言葉でも目で見たことでも無意識（潜在意識）の記憶は、強い影響を子どもだけでなく人に与えると言ってよいでしょう。
同様に、「成功するには誰を模範にするかによって決まる。よき師、よき友は人生最大の宝」と述べ、よき師、よき友から無意識的によい影響を受けると言っています。
サミュエル・スマイルズは、受け身であっても良い影響を受けるとしか言っていませんが、もっと能動的に無意識（潜在意識）に強く思い込めば、その効果はより強力になります。
成功したいことを無意識（潜在意識）に強く植え付けて、自分の未来は自分で開くという意識があれば、自ずと成功や夢や願望の実現への道は開けてくるに違いありません。
