アドラーは、フロイト、ユングと並ぶ心理学、精神分析において偉大な功績を残し、その後の研究者に多大な影響を与えた人物です。
数年前にアドラーの思想を解説した書籍「嫌われる勇気」がベストセラーになったことでも有名です。
アドラーは、フロイトが発見した無意識(潜在意識)の概念を継承しながら、フロイトとは異なる理解をして「幸せになる」あるいは「夢や希望を実現させる」には勇気があれば良いと主張しました。
アドラーを理解すると対人関係もよくなり、悩みも悩みでなくなる考え方ができるようになります。アドラーの考え方がどのようなものかについて解説します。
■アドラーの無意識の概念に対する考え方
フロイトは、幼児期のトラウマや、過去に抑圧された欲求などの個人の無意識が原因となって、人の行動に影響を与えるという「原因論」を提唱しました。
一方アドラーは、人は過去の「原因」に動かされて生きているのではなく、いまの「目的」を実現するために生きているとフロイトの「原因論」を否定して「目的論」を提唱しました。
そして、夢や希望を実現できず、また幸せになれないのは、トラウマや過去の抑圧された無意識を理由にして「変わらない、変われない」と、今の自分を変える「勇気」が足りないからだと主張しました。
つまりアドラーは、「会社や学校に行きたくない」と考えるから、無意識のなかにあるトラウマなどが記憶から呼び起こされて理由にされるのだと考えました。
■アドラーを理解してポジティブに生きて夢や願望を実現する
(1)今に疑問があるならとにかく何かをしてみる!
今、「幸せでない」「夢も希望もない」などと思っていて、そう思う原因に思い当たるならアドラーは次のように言うでしょう。
「どうして」という原因を気にしないで、「何かをしたい」という「目的」を考えて、どうやって「目的」を実現できるように生きようかと考えることが大切だと。
だれにでも、したいこと、なりたいこと、実現したいことがありますから、できない理由・原因を無視してとにかく目的を作って、何でもいいから何かをしてみることです。
(2)やる気がでないときは心に真の原因を問おう!
「眠いから起きたくない」「勇気がないから好きな人に告白できない」「今日は疲れているから明日にしよう」などと、私たちはよく理由をつけてやるべきこと、やらねばならないことを、やらなかったり先延ばししたりします。
しかし、病気で本当に行動できないときもありますが、大半は本当の原因が別にあるのが一般的です。
「眠いから」は、本当は会社や学校に行きたくない理由があるから眠いことを理由にしているだけです。
「勇気がないから」は振られたら自分が惨めになるからというのが本音の理由です。「疲れているから」はただ楽をしたいからもっともらしい理由を見つけて言っているだけです。だから、やる勇気を持てると人生を変えられます。
アドラーは、本音を目的と考えて目的を実現するために勇気を持って行動することをすすめています。
素直に真の理由=目的に向かって少しずつ「どうやって生きよう」と考えて、やれることをしっかり実行することが重要と言っています。
(3)劣等感は「やる気の強いエネルギー」を生む
恐らく劣等感の少ない人はいても、劣等感に無縁の人はこの世の中にはいないのではと思われます。
しかし、劣等感があることで、それを克服しようという意欲が湧いてくることも事実です。
劣等感がまったくないと進歩が止まってしまいます。また、劣等感からあえて目をそらして劣等感を無視することも同じ結果になります。
強い「やる気のエネルギー」生むため劣等感を持つ、あるいは意識することは決して悪いことではありません。
なお、劣等感に押しつぶされてしまう危険性があります。劣等感に押しつぶされないためには自分自身を常に褒めてやりましょう。
例えば、子どもが勉強しないからと親が怒って無理やりに勉強をやらせ、子どもが終わったときには、「褒めて、そして勉強を頑張ったことがとてもうれしい」と伝えると、子どもには次も頑張ろうという意欲が湧きます。
「よく頑張ったね」だけでは子どものモチベーションはあまりあがりません。
子どもに対するときと同様に頑張った自分自身に対して自画自賛ですが第三者として褒めて、頑張った自分に対してうれしい感情を強く持ちましょう。「やっと終わった」だけで終わらせてはいけません。
■できる理由を探す人間になろう
できない人間はできない理由をいろいろ探してきて並べ立てます。しかし、できる人間はできる理由を探してやることを考えます。
アドラーも似たような意味で「実現したくても実現できないことや、やりたいと思ってもやれないことについて原因を探すのではなく、目的を探せ」と言っています。
自分は何を実現したいのか、何をやりたいのかを自分自身に強く問うことで夢や願望に近づけます。
夢や願望が成功イメージで潜在意識に強く植え付けられていれば、より実現も容易になるに違いありません。