2020東京オリンピックは日本選手の大活躍で金メダル27個は過去最多、また銀メダル14個・銅メダル17個を含むメダルの合計58個も過去最多というすばらしい結果で幕を閉じました。開催前には賛否両論がありましたが、開催後は選手たちの熱い戦いと優れたパフォーマンスに興奮・熱狂・感動が日本中に広がりました。 興奮・感動に輪をかけたのは日本選手たちの活躍とともに誰もが予想できない展開での手に汗を握る幾多の逆転劇でした。野球の9回裏2点差からの逆転、卓球混合ダブルスで絶体絶命とも言える点差でマッチポイントを握られてからの逆転、女子バスケットボールで残り16秒での逆転スリーポイントシュートの成功などです。選手の勝利にかける執念が実を結んだ瞬間でした。
しかし、一方で金メダルが確実と有力視されながら取れなかったいくつかの競技があります。バドミントン、テニス、水泳などです。その原因として、一部の選手はケガなどによるフィジカル面で万全ではなかったことがあります。しかし、それ以外の理由としてメンタル面があったと思われます。オリンピックのような大きな舞台で金メダルが確実、あるいは有力視されるほど実力のある選手でもプレッシャーからの緊張や不安、怖れなどを感じると言います。緊張や不安、恐れがメンタルに影響し、それが選手のパフォーマンスを低下させるからです。 オリンピックに出るような選手、特に金メダルが期待されている選手は能力が一段と高いうえに厳しい練習や試合を繰り返し行い、良い結果を残して自信にあふれています。また、メンタルトレーニングも受けて心身の両面でオリンピックを迎えているのではないかと思います。しかし、それでも選手は緊張や不安、怖れをどこかに感じています。それをうまくコントロールできたときに、その選手には栄光の瞬間が確実に訪れています。しかし、一瞬でもコントロールを失うと、金メダルが逃げていく可能性が高まります。
選手のパフォーマンスに悪い影響を与える緊張や不安、怖れを抑えるには「自己効力感」と「自己肯定感」の2つの両方を高めることが必要です。自己効力感とは「物事を解決・達成する能力を持っているという自信・確信」のこと、言い換えれば「自分ならできるという自信に満ちた感覚」のことです。 なお、何でもできるという自信は根拠のない単なる思い込みではなく、明確な根拠に裏打ちされている自信のことです。例えば、スポーツであれば優れた記録や大きな大会での優勝経験、仕事であれば営業成績や提案した企画が優れているなどの実務能力、学業であれば優れたテスト結果や研究結果などの実績が伴って生まれる自信のことです。 自己肯定感とは「自分を受け入れる(肯定する)」という感情のことです。自分自身に根拠がなくても「自分は近い将来に大物になれる」という自信がある人は自己肯定感の高い人です。ともに自信があるとき、自己効力感と自己肯定感は、表面的には似ていますが、自己効力感は、自分の能力に対する自己評価で、自己肯定感は能力ではなく、自分の存在意義に対する自己評価という違いがあります。 自己効力感と自己肯定感を高めることは、スポーツ選手に限らず会社経営、ビジネス、研究開発、恋愛、学業などにおいても重要です。両方が高いと「自分はできる」と自分の能力に自信があるので積極的に何事にも取り組めます。また、困難に直面しても「自分は優れている」「成功できる」と自己を肯定的に捉えられるので挫折することもなく前向きな姿勢でいられます。
スポーツでは能力差が顕著に表れるので自己効力感を高めるには、才能+猛練習が必要ですが、ビジネスや一般生活では、他人にはない自分だけの独自の能力を見つけ出すことで自己効力感を高められます。自己肯定感は、まず自分自身を受け入れ、自分の良さを再発見し、まだ知らない自分自身に気づくことが大切です。 人間の存在自体に優劣はなく、またすべての人は何か他人に負けない良い点を持っています。そのことを自覚することで自己肯定感を高められます。 この自己効力感と自己肯定感を常にうまく発揮できるように高めるには、潜在意識の活用が必要です。表面的にしか高められないと継続できません。どこで、「できる能力があるという自信」と「自分はやればできる人間だと自分に対する評価」を潜在意識に植え付けます。 自己効力感には確信に近い「能力」に対する自信が必要なため、過去の成功体験や成功したイメージを強く思い込んで潜在意識に植え付けます。その結果、常に自信に満ちた行動ができるようになります。
自己肯定感は自分という存在を肯定して認め、自己評価を高くすれば良いので潜在意識の活用で効果的に高められます。自己効力感と自己肯定感のいずれかが低いと、いくら自信があっても100%成功を続けるのは困難なため、壁にぶつかったとき自信が崩れ去ると立ち直れない可能性があります。 また、いくら自分ができると思えても、現実にやろうとしたときに実際に行う自信が湧いてこないので、常に中途半端な状態が継続します。そして、最後には諦めはしないけれども、できないのが自分だと認めてしまって、そこで進歩が止まってしまう可能性があります。 そのため、自己効力感と自己肯定感の両方を高めることは、スポーツだけに限らずビジネスや学業などあらゆる面で成功するために必要な基本的条件の1つです。特に競争が激しく最終決定までに時間のかかる事業や成果がすぐに出ずに数多くの失敗からしか生まれない研究開発などでは必須の条件です。潜在意識を活用すれば、両方をうまく効果的に高められます。