vol.35 中村天風と潜在意識【人生を好転させる潜在意識の活用法】

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vol.35 中村天風と潜在意識【人生を好転させる潜在意識の活用法】

中村天風は本名を中村三郎といい、明治の始め(1876年)に旧藩士(武士)の家に生まれ、剣術を極め学校では柔道部のエースとして活躍、また英会話をマスターするなど文武両道に優れた人物です。

一方、柔道の試合で負けた相手に闇討ちに遭い、その復讐を果たす途中、包丁で襲ってきた相手の学生を逆に刺殺してしまったという話が伝わっており気性の荒い面を持った人物です。

なお、この件は正当防衛が認められますが、学校からは退学処分にされています。

その後、帝国陸軍の諜報員(スパイ)として中国(満州)で活動。1904年にはロシア軍のコサック兵に捕まって銃殺刑に処せられる直前に部下に救出されるなど波乱万丈の人生を送ります。

その直後の1906年に急速に症状が進む肺結核を発病。病気のために弱くなった心を強くするためにアメリカに渡航しようとしますが、結核患者には許可が下りなかったため密航、アメリカで大学に入学し病気の原因を研究。

また、ヨーロッパに渡ってイギリスやフランスで病気治療のためのヒントを得ようとしましたが果たせなかったようで帰国の途につきます。

その途中でヨーガの聖人に出会い、弟子入りしてヒマラヤの麓で2年半修行して悟りを得るとともに、その間に結核は完治したと言われています。

天風の波乱に富んだ人生の一部を少し長く紹介したのは、人間の存在の根源は「心の有りよう」「心の持つ力」であるという思想が、その波乱に富んだ人生そのものに大きく反映されていると考えるからです。

天風がもともと相当な行動力があったとしても、自身の思いをかなえるには何としてでも「実行するのだ」という強い心の後押しなくしては、なし得なかったのではという人生を歩んでいます。

そして天風は、「心の有りよう」「心の持つ力」には潜在意識が重要と強く言っています。

天風は書籍を何冊か世に残していますが、一般の人ではとても考えられないような人生を歩んできた人物の回想録や語録だけに評論家の机上の評論とは一線を画しています。

経歴と重ね合わせると語録には重みがあります。一本芯の通った人生を生きたいと思うときにそばにあるとよい影響を受けられる書籍ばかりです。

中村天風の思想・哲学と潜在意識

天風は、「人生を成功させるゴールデン・キーは、想像力によって強固になった信念の力だ。その力をつくるには潜在意識のもっているすばらしい作用を、実在意識からうまくコントロールしていく方法を活用することだ」と述べています。

天風は、フロイトより約20歳若くユングとはほぼ同年齢です。フロイトやユングが提唱した無意識(潜在意識)に触れたかどうかは定かではありませんが、無意識(潜在意識)を認識し、認識するだけでなく重要だから活用せよ述べています。

また、「潜在意識は人間の生命を生かし、現実化するよう自然に努力を行う」。だから、「自分の念願、宿願をはっきりと心に描くことを絶え間なくやるという技術に熟達せよ」と自分の夢、願望を潜在意識に強く思い込ませることをうまくやれるようにしなさいと助言をしています。

そして、「天は自ら助くる者を助くという言葉があるが、自らを助けないで、自分というものはつくればつくられるのに少しもつくらずに、やれ病が、やれ運命がどうのって言ってる人間は駄目な人間だ」と厳しく指摘します。そこには、自分の心の持ち方さえ変えれば人生や運は必ず開けるという鼓舞・応援が込められています。

消極的思考、マイナス思考を避ける

具体的な行動としては、「日々使っている言葉ほど、実在意識の態度を決定するうえに、直接に強烈な暗示力を持っているものはない」と言い、「いかなるときにも積極的な言葉以外を使わぬよう心がけること。

そうすれば、期せずして健康も運命も完全になる」と述べています。日本に古くからある言霊(ことだま)信仰の影響も受けているとも思えますが、潜在意識を活用するには消極的思考、マイナス思考は厳禁なので理にかなっています。

よく医師がさじを投げた末期患者が医師も驚く回復力を示すことがありますが、患者がプラス思考で少しでも長く生きたいという強い気持ちは、免疫細胞を活性化し免疫力を強めていることがわかってきています。

心にないことは生じない、無意識が生じさせている

天風は「人の心のなかにないことは生じない。しかし、みんなこれがわかってない」、だから「自分の願っていなかったことが、現実の自分の人生に起きても、自分に責任はない、あいつが悪い、こういうことが悪いのだといって責めを他に負わせようとする」と言っています。

実際は、「自分が無意識的に心のなかに思っていたことが起きているのに気がついていない、実在意識以外には思ったことじゃないと思っている。だから、実在意識で思ったことだけが思ったことで、潜在意識のなかで描かれた絵図が、現実になった場合は、自分には責任がないと感じる」と潜在意識が行動に強い影響を与えていることを意識して知れと言います。そして、そのためには潜在意識の大掃除をせよと言います。

■「潜在意識の大掃除をせよ」の意味とは

天風は、マイナス思考から出てくる悩みについては、「心のなかに何かの取り越し苦労か、あるいは消極的な思考、すなわち憤怒、恐怖、悲観、憎悪、怨恨、嫉妬、復讐、憂愁、煩悶、苦労などの消極的感情によって起こる」と言い、その大部分は、「潜在意識の整理が不完全だからだ」と理由を述べています。

潜在意識の整理が不完全だというのは、潜在意識からマイナスな思考をなくすほどプラス思考な言葉を潜在意識に強く思い込めと言うことでしょう。

その証拠に天風は次のように言います。「消極的感情、情念を、自分の実在意識のなかに発生させないようにしなければならないが、それがいけないと言われたそばから、発生させまいと思っても駄目。

学者や識者、あるいは宗教家は、そういうときに、そういう思い方考え方をするからいけないと言うけれども、私から言わせれば思ったり考えたりするのがいけないのではない。潜在意識のなかにそういうことを思わせたり考えさせたりするような材料をため込んでおくことがいけないのだ」と。

そして、「タルに水をいっぱい入れておいたら、いつのまにか、ぼうふらがわき出したとする。

これはいけないって、あとから新しい水をいくら入れても、ぼうふらの卵をとらないかぎりはいつまで待ってもぼうふらをなくせない。だから何をおいても、まず第一番に潜在意識、すなわち心の奥の大掃除をやらなければいけないのだ」と例えをあげて理由を説明しています。

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