vol.105 ラグビー世界No.1のアイルランドを撃破した日本チームと潜在意識【人生が好転する潜在意識の活用法】

日本ラグビー界にとって2019年9月28日は、2015年9月19日に南アフリカに勝利したこと以上に記念すべき日となりました。この日、日本はワールドカップ開始前の世界ランキング1位(試合当日は2位)で優勝候補のアイルランドを19対12で勝利。4年前は、当時ワールドカップではニュージーランドとオーストラリアに以外の国には負けたことのない世界ランキング3位の強豪国である南アフリカを相手に試合終了直前に僅差の逆転勝ちでした。

この勝利は、「スポーツ史上最大の番狂わせ」など奇跡の勝利として語られました、しかし、今回の勝利は、試合内容においても相手を圧倒。その証拠にアイルランドが日本の強さを認識したシーンがありました。

それは、試合終了直前に最後の攻撃を諦めなければ少なくとも同点にして引き分けに持ち込める可能性があったにもかかわらず、そのリスクを冒すと日本に逆襲されて7点以上の点差で負ける可能性があったことから攻撃する選択を止めて、ボールをタッチに蹴り出して試合を終了させたことです。

この選択をなぜアイルランドがしたかというと、ラグビーのルールで7点をこえる点差で負けると勝ち点はゼロですが、7点差以内の点差であれば勝ち点1が取れるからです。

攻撃を選択してトライとゴールを決めれば7点が入って引き分けにできます。引き分けに持ち込めれば勝ち点2点を取れますが、途中でボールを日本に奪われれば逆に日本に点を入れられて7点差以上で負けるリスクがあり、勝ち点はゼロになります。

アイルランドは日本が相手では7点を取れないと日本の強さを認識したのです。試合の状況は大きく異なりますが、前回大会の日本対南アフリカ戦では同じ試合終了の直前、日本はほぼリスクゼロで引き分けに持ち込むプレーの選択もできましたが、勝利できる点が取れるトライを選択して逆転勝利に結びつけました。

奇跡と言われた勝利から4年。今の日本ラグビーチームはどんな強豪国に勝ってもこれからは奇跡の勝利と呼ばれることはないでしょう。日本チームの強さの1つに潜在意識が大きく働いていることについて紹介します。

 

■逆転トライを生んだ福岡選手と潜在意識

アイルランド戦で9対12と3点差を逆転するトライを決めたのはワールドカップ前の試合でケガを負い、この試合で途中から出場した福岡選手でした。福岡選手で印象に残るのは、このトライの他にも後半の終了間近の時間帯にアイルランドの猛攻の前に防戦一方だったとき、アイルランドの選手のパスをインターセプトして一気に自陣から55メートルを爆走、残念ながらトライ直前で相手選手のタックルにつかまってトライこそできませんでしたが、勝利をほぼ確定させたプレーでした。

この2つのビッグプレーで日本は強豪アイルランドに勝利しました。華やかさでは一瞬の判断で敵のパスしたボールを奪っての55メートルの激走が一番かもしれません。しかし、この試合で最もハイライトすべきプレーは、福岡選手が逆転のトライを決めるボールをパスしたティモシー選手と受け取った福岡選手の連係プレーでした。

一瞬なのでスローでないと分からないのですが、パスしたティモシー選手は受け取る福岡選手をまったく見ないでボールを投げています。一瞬の判断でしなければならないプレーでは、顕在意識で考えている暇はなく仲間が受け取ってくれるという練習で鍛え上げた潜在意識によるプレーでなければ成功できていないプレーでした。

 

■主将リーチ・マイケル選手のリーダーシップと潜在意識

アイルランド戦では、目に見える直接的な勝因は福岡選手の2つのビッグプレーでしたが、隠れた勝因はリーチ選手のリーダーシップとリーチ選手とチームメイト全員の潜在意識によるつながりであったと考えられます。

日本代表チームで主将を務めるリーチ選手は、出場した過去3大会のワールドカップではすべての試合で先発メンバーとして出場し、ベンチスタートはありませんでした。しかし、この試合で初めて控え選手としてベンチスタートをヘッドコーチから言い渡されます。

合宿で病気を発症するなどしてパフォーマンスが多少落ちてきていることを自覚しながらも、リーチ選手自身も先発落ちを言い渡されたときは「がっかりした」と述べているとおり、通常であればモチベーションが落ちるのが一般的です。その結果、チーム全体のモチベーションが低下する可能性があります。

しかし、リーチ選手は、背中をチーム全員が見ている主将としての立場から、腐って落ち込んでいる姿は見せられないとして練習では、先発組に対して鬼気迫るプレーで相手チーム役を務めるとともに、いつ出場を命じられても良いパフォーマンスを出せるように自分自身を鍛えます。

代役で先発出場したマフィ選手の負傷で予定より早く試合に出ることなったリーチ選手は、交代直後の前半34分には気迫のタックルで相手を仰向けに倒して攻撃の勢いを止めるなどチームを鼓舞します。

このようなリーチ選手の主将としての今までのリーダーシップはチーム全員の潜在意識に浸透しており、さらに試合でのリーチ選手のプレーを見ることで信頼感が増します。

このことはチーム全体の意識を一つの方向に向かせて、プレーする15人の選手のパワーが足し算ではなく掛け算になって、さらに大きなパワーを生み出します。日本対アイルランド戦の結果は、決して驚きの結果ではなく選手個々の能力と厳しい練習の成果に加えて潜在意識が大きく働いた必然の結果であったといえるでしょう。