vol.107 2019年度のノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏と潜在意識【人生が好転する潜在意識の活用法】

2019/11/11

前号のiPS細胞の研究でノーベル賞を受賞した山中伸弥教授に続き今回はリチウムイオン電池の研究でノーベル賞を受賞した吉野彰氏と潜在意識の関係について紹介します。

電池の歴史は古く、その原理を発見したのは約240年以上も前の1780年にイタリアの生物学者ガルバーニと言われています。その後、1800年にイタリア人のボルタが現在の化学反応によって生じたエネルギーを利用して直流の電力を発生させる電池の原型であるボルタ電池を発明します。ちなみに電圧を意味するボルトはボルタの名前が由来になっています。

さらに1868年にはフランス人のルクランシェが、現在の乾電池に近いルクランシェ電池を発明。しかし、ルクランシェ電池は液漏れを起こす問題がありました。この欠点を1888年にドイツ人のガスナーが解消し、液が漏れない電池を発明。この電池は液が漏れないことから乾いた電池と呼ばれ、これが現在多くの人が使っている乾電池の始まりとされています。

しかし、これらの乾電池は充電して何度も使えない使い捨て電池(一次電池)です。二次電池は蓄電池または充電式電池とも呼ばれます。

充電して何度も使える二次電池が商品化されたのは1960年代の初めで、まだわずか50年の歴史しかありません。この理由について吉野氏は、電池の開発には化学と電気の両方の知識が必要で、両方の専門知識を持った開発者が少なかったからではないかと述べています。

では、化学が専門であった吉野氏がどうして高性能なリチウムイオン電池を開発できたのでしょうか? 開発の成功の裏には潜在意識が重要な働きをしたことについて紹介します。

 

■困難をきわめた二次電池の開発

電池の主要構成は、プラスの電極の材料、マイナスの電極の材料、電解液、およびセパレータ(プラスとマイナスの電極の間を電解液で発生したイオンが通過する穴の開いた部材)の4つです。

電池の性能はこれらの材料に依存することが多く、それぞれの材料の性能を上げること、それらのなかから最適な材料の組み合わせを見つけ出すこと、コストを抑えることのすべてを満足させることが求められます。また、それぞれの材料が単体では高性能でも電池として組み合わせると期待通りの性能が出ない難しさもあります。

さらに吉野氏は利益を追求する企業に勤務する研究開発者のため、その成果が事業として成功することが求められます。

一般的に企業が「無」から「有」生み出す新規事業にチャレンジするときには、学術的な研究であれば以下の3つの関門の内第一の関門をクリアできれば成果として認められますが、企業の場合は成功までに3つの関門をすべてクリアしなければなりません。企業内研究開発者であった吉野氏は「第三の関門 ダーウィンの海」が最も苦しくきつかったと述べています。

・「悪魔の川」と呼ばれる第一の関門
それまで世界になかった新しいものを生み出す段階での苦労のこと。

・「死の谷」と呼ばれる第二の関門
基礎研究の結果、開発できたものを商品化する段階での苦労のこと。

・「ダーウィンの海」と呼ばれる第三の関門
基礎研究や商品化の段階での苦労を解決して販売にこぎつけても、新製品は簡単に売れず、売れるようにする苦労のこと。

 

■吉野氏がリチウムイオン電池の開発に成功した理由

リチウムイオン電池の開発は、基礎研究のときから困難をきわめます。そのような状況でも成功できた理由を吉野氏は、「柔軟性と粘り強さ(執着心)」といい、研究に行き詰まっているとき、大掃除でたまたま見つけた外国の文献がヒントになってリチウムイオン電池の開発につながったと述べています。

成功を諦めない粘り強さがリチウムイオン電池の開発を成功させたいという潜在意識を刺激し、普通の人であれば見逃したかもしれない外国の文献を開発のヒントにできたのだと考えられます。

粘り強さは、「研究成果が必要とされる未来がくる。あるいはゴールがあると確信を持てれば、少々の苦労はあっても必ずやり遂げられる」という強い思いから生まれます。

もう1つの柔軟性は、吉野氏によれば「壁に突き当たっても深刻にならず前向きにとらえる脳天気な考え方ができること」です。また、リチウムイオン電池の開発にはいくつもの技術的なブレークスルーが必要でしたが、吉野氏は「ブレークスルーは結局一瞬のひらめき。いかに集中して考えるかが重要」と述べています。

そのひらめきは、今までの延長上の思考からは決して生まれません。ひらめきは、一見すると関係のないような2つのことを組み合わせてみたり、常識を否定してみたり、開発とは関係のないことをしているときなどで多く生まれています。

そして、壁に突き当たっても開発を続けられる神経には脳天気さが求められます。テレビで見る吉野氏の発言や少しおちゃめな振る舞いを見ると、苦しみながらも研究開発を良い意味で脳天気に楽しんでいたのではと感じられます。

 

■吉野氏と数多くの実用的な発明をしたエジソンとの共通点

エジソンの名言には、企業で売るための研究開発をしなければならなかった吉野氏と重なる内容のものが多数あります。

 

・売れないものは発明したくない。売れることが実用性の証明であり、実用性が成功を意味する。

・まず世界が必要としているものを見つけ出す。そして、それを発明する。

 

また、ある意味で脳天気さを持っている。あるいは意図的に持とうとしている名言もあります。

・私は失敗したことがない。ただ、1万通りのうまく行かない方法を見つけただけだ。

・失敗したわけではない。それを誤りだと言ってはいけない。勉強したのだと言いたまえ。

そして、エジソンは「潜在意識に願いをかけずに寝てはならない」という名言も残しているようです。エジソンは、寝る時間も惜しんで発明に没頭。1日の睡眠時間は3~4時間と言われています。

潜在意識に刷り込むのは寝る前が効果的と知っていたのでしょうか? ひらめきを得るために潜在意識を活用していたと思われます。吉野氏にもリチウムイオン電池の開発を成功させたいという強い思いが潜在意識に刷り込まれ、それがいくつもの技術的な壁をブレークするひらめきを生んだと考えられます。