vol.106 iPS細胞の研究でノーベル医学賞を受賞した山中伸弥教授と潜在意識【人生が好転する潜在意識の活用法】
2019/10/24 2019/11/01
2012年にiPS細胞の研究でノーベル生理・医学賞を受賞した山中伸弥教授と潜在意識の関係について記事を書こうとしていた10月9日、偶然にも2019年度のノーベル化学賞を旭化成の名誉フェローの吉野彰氏が受賞したという喜ばしいニュースが報じられました。
ノーベル賞の受賞を同じ日本人として誇りに思うとともに心より祝福申し上げます。吉野彰氏の受賞理由は、世界中で多くの人が実際に使用して多大な恩恵を受けているリチウムイオン電池の開発・実用化に貢献したことです。
一方、山中教授の受賞理由は細胞が分化して成熟した細胞を未分化の状態に戻す「細胞核の初期化(リプログラミング)」に関する画期的な発見をしたことです。
山中教授が作成することに成功したさまざまな体細胞に分化可能な多能性とほぼ無限の増殖性をもつiPS細胞は、治療法が未だ確立されていない難病の原因の解明、薬の毒性の検査、新しい治療法や薬剤の効果的な開発を可能にするため、人類にとって計り知れない恩恵をもたらします。
そして、今までは細胞の老化は避けられず、それが原因で起こるさまざまな疾患は、現時点では根治できる治療法が存在していません。
しかし、iPS細胞などを活用した再生医療が進歩、実用化すれば人体の臓器や組織における細胞の老化が原因の病気は、より効果的、根本的な治療を可能にすることが期待できます。私たち人間にとって最も根源的な「生命」と深く関わる山中教授のiPS細胞の研究と潜在意識の関係について紹介します。
■iPS細胞は山中教授の挫折と失敗から生まれた?
山中教授はiPS細胞を作り出すまでには研究だけでなく人生においても数多くの挫折と失敗を繰り返してきたと講演などで何度も語っています。研究で無から有を生み出すような成果を出すには、特にノーベル賞の受賞に値するような人類にとって大きな価値のある成果を出すには数え切れない失敗と挫折を繰り返した結果の上に成り立っています。多くの研究者は、挫折や失敗を繰り返すと無理、不可能と研究をギブアップしてやめてしまいます。
しかし、それでも諦めずに寝る時間を減らし、寝ている間も考えるなど24時間365日諦めずに研究を継続した科学者が成功しています。
山中教授は、講演で自身の挫折や失敗の紹介と一緒に中国の故事に由来する「人間万事塞翁が馬」ということわざを紹介して、若い人に人生を生きていくうえでの心構えを説いています。「人間万事塞翁が馬」とは、「人生の幸・不幸は予測することが困難で、幸運も喜ぶに足らず、不幸もまた悲しむにあたらない」という意味です。
山中教授は、不幸だと思ったできごとが、逆に幸運を招き、逆に幸運だと思ったできごとが不幸を招くことがあるから個々のできごとに一喜一憂せずに、特に挫折や失敗の裏には成功があると考えて、どっしりと構えて対応してくことが大切と話します。
山中教授も、最初は父親の勧めで医学の道を志し、臨床医(外科医)としてスタートしますが、手術が下手などの理由や治療できな病気も治療したいという気持ちから研究者になろうと決意します。そして大学院に入り直しアメリカにも渡って研究者としての道を歩み始めます。アメリカで研究者として自信もついて帰国しますが、研究環境や給与面などの違いなどの理由で研究者から逃げ出して、また臨床医に戻ろうと決意します。
しかし、また臨床医に戻っていたら人類に極めて大きな恩恵をもたらすiPS細胞を作り出せなかったと述べています。iPS細胞を作り出すときにも数多くの失敗・挫折を乗り越えて成功しています。中国には、同じような意味の故事「禍福は糾える縄の如し」があります。意味は、「幸福と不幸は、より合わせた縄のように交互にやってくる」です。
夢や希望を実現させる途中段階では、必ず不幸、大きな壁、挫折、失敗が訪れます。夢や願望が大きければ大きいほど、それらも大きく、また何度も訪れます。それでも諦めないで夢や願望を追い続けることで実現できます。諦めないためには夢や願望を強く潜在意識に持つことが重要です。
■夢や願望を実現させるヒントは突然現れる潜在意識の働き
ノーベル賞の受賞者やそれ以外でも科学者や芸術家などが「セレンディピティ」という言葉をインタビューなどで使うことがあります。「セレンディピティ」とは、「偶然によってもたらされた幸運」あるいは「幸運な偶然を手に入れる力」という意味の言葉です。日本にも同じような意味の「棚からぼたもち」ということわざがあります。
しかし、「セレンディピティ」は、単に思いがけない好運を得るという意味ではありません。「セレンディピティ」には、自らの英知・努力によって、誰も気づかないことにも注意を払い、注目することで有益なことや幸運を発見できる能力の意味が含まれています。
そういう意味なら、「偶然」とは言わないのではと突っ込む人もいるかもしれません。しかし、ノーベル賞受賞の科学者であっても多くの場合、ノーベル賞に値する発見は論理的な思考の積み重ねではなく、ある偶然のきっかけがヒントになって生まれています。その偶然を見つけるまでの努力は一般的な科学者の枠を大きくこえています。
なぜ偶然がその科学者に訪れるかといえば、24時間365日常に研究のことしか考えていないため、全く関係のないことでも、無意識・無条件に研究の視点からそのことに注目するようになっているからです。他の科学者であれば見逃すようなことも、もしかしたらというインスピレーションが働きます。
これは人との出会いにもおいても起こります。研究とはまったく関係のない分野の人との会話をしていても研究のことが潜在意識に強くあると、何気ない会話がヒントになって、それがブレークスルーにつながります。以前に京セラの創業者稲盛和夫氏を紹介しましたが、稲盛氏は成功するには「潜在意識にまで透徹する強い持続した願望をもつ」ことが必要と述べています。
これが「セレンディピティ」でいうところの偶然です。つまり、「セレンディピティ」がもたらす有益なことや幸運や発見をもたらす偶然は、潜在意識が働かなければ極めて困難といえるでしょう。山中教授や今年受賞した吉野彰氏にも潜在意識による「セレンディピティ」によって成功しています。