vol.44 脳科学者中野信子の「努力不要論」と潜在意識【人生を好転させる潜在意識の活用法】

2018/08/09

多くの人が必要と考える努力が不要というタイトルは、違和感があるとともに、どういう意味だろうという疑問を湧き起こさせます。

一方で、努力を人一倍しているのに思うような成果をあげられていない人にとっては救いになる魅力的なタイトルです。なぜなら努力をしなければならないという強迫観念で疲弊し、ひどい場合は「うつ病」になる人もいるからです。

著者は、書籍のなかで「成果を出すために必要な真の努力は必要だが、無駄な努力は不要」と述べています。

では、成果を出すための努力とはどのようにすればよいのでしょうか?

また、せっかくの努力を無にしないで成功するには潜在意識を活用するとよいことについて紹介します。

■努力が不要な理由、無駄な努力、過剰な努力がよくない理由

著者は「がむしゃらに努力をすればいいというのは間違い」と、努力のすべてを否定しているわけでありません。「がむしゃらに努力をすればいいというのは間違い」だという理由は、努力すれば誰でもオリンピックに出場できるわけではないことからも簡単にわかります。

また、よく知られているエジソンの名言に、「1%のひらめきと99%の努力」という言葉があります。この言葉は、天才といえども努力が必要な例えとして使われますが、実は誤解で、大変な努力をしてもひらめきがなければ、無駄な努力になるとエジソンはいいたかったのだといわれています。

著者によると、日本人は日本社会の構造や欧米人との脳内ホルモンの分泌の違い、努力に対する考え方などから無理な、過剰な努力をしがちであるといいます。

努力を重視しすぎて過剰な努力をすることがよくない理由が2つあります。

1.努力が目的化すると中毒状態になって善悪の判断ができなくなる

努力が重要と思いこむと結果に関係なく、努力することが目的になって必死に努力する人が現れます。しかし、努力をあまりにもし過ぎると、努力する自分に喜びを感じる努力の中毒患者になるといいます。

このような状態になると、「自分はこれだけの正しいこと(努力)をしたんだから何をしても許される」という言い訳を脳が無意識にして、倫理的に悪いことをする傾向が高まるという研究があるそうです。

2.努力状態が高まると洗脳されやすく、また不合理な行動をする

努力状態が高まると、脳の内側前頭前野が「自分は良いことをしている」と判断することで快感が生まれます。また、努力によって睡眠不足、空腹(血糖値が低い)などの条件が生じると、考える能力が低下することがわかっています。

これにより、善悪や損得の判断ができなくなって洗脳されやすくなり、また不合理な判断をしやすくなります。

では、無駄な努力にならないためにはどうすればよいでしょうか?

著者は、成果を出すために必要な「(1)目的を設定する」「(2)戦略を立てる」「(3)実行する」という3段階のプロセスを踏むことが必要といいます。

なお著者の論理によると、(1)では、自分の能力にあった目的の設定が必要です。能力以上の目的を設定すると無駄、過剰な努力をする可能性が生まれるからです。

しかし、一方である程度の高い目標を達成するという目的は、「挑戦意欲と達成したときの刺激が大きい」「不可能に思える目標はイノベーションとブレイクスルーを生む」などのメリットもあります。目的・目標を段階別にするなどの工夫が必要です。

■努力を成功に結びつけるためには

著者の主張に近い心理学の法則に「エミール・クーエの法則(または努力逆転の法則)」があります。

これは、頑張ろうとするほど、その努力とは反対の結果になるという法則で、フランスの心理学者エミール・クーエが見つけた法則です。

1.意志力と想像力(イメージ)が相反すると想像力が例外なく勝つ。

2.意志の力で「努力すればするほど」想像力は強力となり、想像力の強さは意志力の2乗となる。

3.意志力と想像力が一致するときは、意志は負けるどころか倍化される。

1で書かれている法則は、多くの人が過去に経験したことがあると思われることでわかります。

例えば、幅50センチ、長さ10メートルの板が地上1メートルの高さにあるとき小学生以上であれば全員が問題なく渡りきれるでしょう。
しかし、これが高さ50メートルのビルとビルの間に渡されているとしたら、たとえ無風状態のときでも渡ろうとする人はほぼいないでしょう。

渡るという意志があれば運動能力的には渡れるはずですが、渡れないのは落ちたらどうしよう、突然強い風が吹くかもしれないなどの想像が働くためです。この想像力を働かせて危険を回避することは、原始時代にはあらゆることが危険と隣り合わせの状態で生活を強いられたため身についた能力なのかもしれません。

一般的に頑張って努力をする人は、「努力をしなければ目的・目標は達成できない」と強く考えています。その裏には努力しなかったらどうなるのだろうという心配(想像)が強く働いています。

いい意味では努力を継続できるモチベーションとなりますが、過剰になるとこれがマイナスに働きます。

やらなければならないという強迫観念で無駄な努力を過剰に継続したり、逆に可能性があるのに自分には能力がないのではという想像が働いて早々に努力を諦めたりする可能性が生じます。

これを回避するには、著者が主張する「(1)目的を設定する」「(2)戦略を立てる」「(3)実行する」という3段階のプロセスを正しく踏んで、(3)の段階の実行で、想像が意志を上回るようにすることです。

これにより正しい努力を継続して行えます。例えば、勉強で英語や数学が苦手だと思うとその科目の勉強を諦めたり、勉強に集中できなかったりします。

また、何かの資格を取得しようと勉強を始めても無理と思い始めると途中で挫折します。

しかし、潜在意識に成功イメージを強く持つことで克服できて努力を継続できます。

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